~旧正月の感染拡大懸念は杞憂に、旅行や外食が勢いよく回復~

~旧正月の感染拡大懸念は杞憂に、旅行や外食が勢いよく回復~

投資情報部 李 燕

2023/01/26

1/19-1/20(※)の香港市場は、連休前の利益確定売りをこなしながら続伸しました。コロナ禍になってから初めて迎える「移動制限なし」の旧正月連休を控え、新型コロナの感染再拡大に対する懸念でポジション調整の売りもみられましたが、経済再開に対する期待を背景とした買いが優勢となりました。

(※香港市場は1/23-1/25に旧正月連休につき休場でした。)

今回のトピックスは、「旧正月の感染拡大懸念は杞憂に、旅行や外食が勢いよく回復」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:1/20(金)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(1/20(金)までの騰落率)
(※香港市場は1/23-1/25に旧正月連休につき休場だったため、1/19-1/20の騰落率です。)

ハンセン指数

騰落率上位
(※)
銘柄名 騰落率
(※)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06098 CG SERVICES 10.6% 13.9% 128.6% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。不動産サービス会社の株価水準は歴史的低水準にあると、大手証券会社が指摘し、業界トップである同社を買い推奨した。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] 8.7% 7.1% 114.9% 中国不動産大手。不動産株が買われた流れの一つ。2023年は住宅ローン金利の低下が見込まれることから、不動産市場は回復する見通しだと、大手証券会社数社が指摘した。
02331 李寧 [リー・ニン] 6.5% 21.3% 46.5% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手。スポーツ用品セクターは2023年に販売回復が期待できるとし、大手証券会社がスポーツ用品関連銘柄の目標株価を引き上げると同時に、同社をトップ推奨銘柄に挙げた。
00883 中国海洋石油 [CNOOC] 5.0% 15.3% 15.2% 中国石油・天然ガス大手。会社側が2022年通期の純利益は前年比99%-104%増になる見通しだと発表し、買われた。中国の経済再開による需要回復期待で原油先物価格が上昇したことも、好材料となった。
01109 華潤置地 [チャイナ・リソーシズランド] 4.7% 17.1% 29.1% 中国不動産大手。不動産株が買われた流れの一つ。2023年は住宅ローン金利の低下が見込まれることから、不動産市場は回復する見通しだと、大手証券会社数社が指摘した。
騰落率下位
(※)
銘柄名 騰落率
(※)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01398 中国工商銀行(ICBC) -0.9% 11.4% 14.7% 4大銀行の一角。中国の全国社会保険基金が同社株の持ち株比率を引き下げたと報じられ、売り材料となった。
00316 東方海外 -1.3% -7.1% 7.9% 海上貨物輸送を手掛ける。大手証券会社が投資判断を「中立」から「アンダーパフォーム」に引き下げ、目標株価も引き下げた。
03692 Hansoh Pharmaceutical -1.9% 21.9% 21.6% 医薬品大手。テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%に達し、利益確定売りに押された。
09633 Nongfu Spring Co Ltd -2.6% 0.4% 4.8% 大手飲料メーカー。競争激化に対する懸念で売られたもよう。同業他社が同社に対抗した新製品を発表した。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] -7.7% 7.5% 27.8% 大手電動工具メーカー。大手証券会社が目標株価を引き下げた。米国のリセッション入りが差し迫るなか、米国の主要顧客が回復力を維持できるかどうかを見極める必要があるとした。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(※)
銘柄名 騰落率
(※)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 7.1% 14.7% 66.9% オンライン旅行サービス大手。旧正月連休の旅行予約状況からは省をまたぐ観光が回復していることが明らかになり、買い材料となった。昨年までは近場旅行が主流だったが、移動制限の解除に伴い、遠方旅行が増加したもよう。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 3.9% 27.4% 71.9% 音響部品メーカー。同社は最先端のオーディオソフトウェアおよびハードウェアのプロバイダーであるSoundskrit(スタットアップ企業)と提携し、高性能MEMSマイクを打ち出す予定だと報じられ、買い材料となった。
00700 騰訊 [テンセント・ホールディングス] 3.1% 33.3% 77.5% ゲーム・フィンテック大手。大手証券会社が目標株価を引き上げた。その理由として、中国の経済再開で主要業務(特に広告)が持ち直すと期待されるほか、コスト削減の継続も利益の増加につながる見通しだとした。
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック]? 2.9% 2.5% 34.4% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。中国の主要iPhone工場は旧正月連休中もフル稼働の見通しだと報じられ、買い手掛かりとなった。
03690 美団(Meituan) 2.8% -4.2% 19.4% 中国フードデリバリー最大手。レストランの予約サービスも提供する。旧正月の大晦日のレストラン予約は一部都市ですでにコロナ前の水準に回復したと報じられ、買われた。
騰落率下位
(※)
銘柄名 騰落率
(※)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09999 網易 [ネットイース] -0.9% 30.9% 41.0% ゲーム大手。テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%を超え、利益確定売りに押され、小幅安となった。
09866 蔚来汽車 [ニオ] -2.6% -1.6% -2.7% 新興EVメーカー。テスラの値下げによる競争激化懸念が売りを誘ったもよう。テスラが中国で値下げを発表した後の週末、テスラのショールームを訪れた人は前週末の5倍以上に増加したと報じられた。
01024 快手(Kuaishou Technology) -3.3% 4.8% 61.0% ショート動画大手。筆頭株主による株式の売却が明らかになり、売り材料となった。
09626 ビリビリ -3.8% 20.6% 134.8% 動画プラットフォーム大手。テクニカル指標のMACDから下降トレンドが示され、利益確定売りが続いた。
09698 万国数拠服務 -5.4% 27.6% 52.7% データセンターを運営。200日移動平均線の突破に失敗し、利益確定売りが続いた。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

1/19-1/20(※)の香港市場では、ハンセン指数が1.7%上昇、ハンセンテック指数は1.0%上昇しました。1/19-1/25の米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、5.4%上昇しました。

(※香港市場は1/23-1/25に旧正月連休につき休場でした。)

コロナ禍になってから初めて迎える「移動制限なし」の旧正月連休を控え、新型コロナの感染再拡大に対する懸念でポジション調整の売りもみられましたが、経済再開に対する期待を背景とした買いが優勢となりました。米国市場のHXC指数も中国の経済再開に対する期待が続き、1/19-1/25に続伸しました。

業種別では(1/19-1/20の香港市場)、素材、エネルギー、不動産が上昇率上位に並びました。

素材は、金・銅大手のツージンマイニング(02899)が反発し、上昇をけん引しました。大手証券会社が2023年は米国の利上げペース鈍化やそれに伴うドル安を背景に金価格の上昇が見込まれると発表し、買い材料となりました。銅大手のコウセイコパー(00358)やアルミニウム大手の中国アルミ(02600)も続伸しました。中国の経済再開による需要拡大を見込み、銅やアルミニウムの先物価格が上昇しました。

リチウム大手のガンフォンリチウム(01772)も買われました。リン酸リチウム電池や三元系(ニッケル・コバルト・マンガンを使用)リチウムイオン電池を製造するバッテリー工場を建設するため、150億元を投資すると発表し、買い手掛かりとなりました。

エネルギーは、中国の3大石油メジャーであるペトロチャイナ(00857)、中国海洋石油(00883)、中国石油化工(00386)が続伸しました。業績期待に加え、中国の経済再開による需要回復期待で原油先物価格が上昇し、好材料となりました。ペトロチャイナと中国海洋石油は2022年通期の純利益について、それぞれ前年比57%-68%増、同99%-104%増になる見通しだと発表しました。

不動産は、カントリーガーデン(02007)や龍湖集団(00960)、華潤置地(01109)など大手デベロッパーが反発をけん引しました。中国の大手証券会社数社が2023年は住宅ローン金利の低下が見込まれることから、不動産市場は回復する見通しだ指摘し、買い材料となりました。

全般的にみて、旧正月連休前の相場動向からすると、旧正月連休中の大規模な移動に伴う感染再拡大に対する懸念よりも、経済再開による景気回復に対する期待が強いことが示されました。「旧正月イベント」が無事に通過したことを踏まえると、今後は新型コロナの感染状況よりも経済再開の状況がより注目されそうです。

主要指数が昨年末から大幅に上昇したことを考えると、期待より弱い経済指標が出た際は、利益確定売りも想定されます。他方、順調に経済再開が進めば、経済指標は月次ベースで回復傾向になると予想されます。したがって、景気見通しの悪化につながるような出来事がなければ、主要指数はスピード調整をこなしながら上昇トレンドが続く可能性があります。

今回のトピックス

【旧正月の感染拡大懸念は杞憂に】

中国では例年、旧正月連休の1週間前から帰省のための「大移動」が始まります。今年は「ゼロコロナ政策」の撤廃で初めて移動制限なしの旧正月となったため、多くの人々が帰省しています。12月中旬に、「ゼロコロナ政策」の撤廃で新型コロナの感染が急拡大したこともあり、旧正月の大移動による感染急拡大やそれに伴う混乱が懸念されました。しかし、そのような懸念は杞憂に終わったようです。

図表4は、中国の検索エンジン最大手の百度が新型コロナに関連する検索データをもとに算出した指数です。「健康相談(新型コロナの対応など)に関する検索指数」と「新型コロナの感染状況に関する検索指数」の推移を確認してみると、いずれも昨年12月に入ってから急上昇した後、昨年末以降は下落しました。そして、足元では下落傾向が続いています。

図表4 百度の新型コロナ感染に関連する検索指数

※百度(Baidu.com)および百度ヘルスのデータをもとにSBI証券が作成。

百度の検索指数の動きは、中国本土の発熱外来の受診者数の推移とも合致しています(図表5)。

図表5 中国本土の発熱外来の受診者数の推移(万人)

※中国疾病対策予防センターの「全国新型コロナの感染状況」(1/25版)をもとにSBI証券が作成。

百度の検索指数と発熱外来の受診者数の推移からは、新型コロナ感染ピークは昨年12月中旬から下旬だった可能性が示されています。そして、旧正月の大移動による感染急拡大やそれに伴う混乱はなく、感染状況は落ち着いていることが伺えます。考えられる理由は、12月中旬から下旬にわたる感染ピーク時に多くの人々が既に感染しており、中国はある程度「集団免疫」を獲得した可能性があります。

また、ワクチン接種率が上昇したことも寄与したとみられます。中国疾病対策予防センターの「全国新型コロナの感染状況」(1/25版)によると、60歳以上のワクチン接種率は1回目が96%、2回目は92%に達しました。昨年11月に「ゼロコロナ政策」を撤廃する直前は1回目の接種率が86%で、2回目はさらに低い水準でした。中国当局は「ゼロコロナ政策」を撤廃する際、ワクチン接種を強化すると表明しており、その後ワクチン接種は進んだ模様です。

【旅行や外食が勢いよく回復】
旧正月連休前や連休中の主な出来事を確認してみると、帰省に伴う感染再拡大や混乱はなく、人々は3年ぶりの「制限なし」の旧正月を楽しんだようです。特に旅行や外食が勢いよく回復し、「リベンジ消費」の様相を呈しました。全般的にみて、旅行や外食の回復はまだ始まったばかりで、その水準もコロナ前とほど遠いため、今後さらに回復する余地は大きいと考えられます。

図表6 旧正月連休前や連休中の主な出来事

※各種報道をもとにSBI証券が作成。

図表7 図表6の主な出来事に関連する銘柄(株価:香港ドル)

関連分野 銘柄 1/20終値 52週高値 52週安値
旅行予約サイト トリップ ドットコム グループ(09961) 303.60 123.30 311.00
同程旅行(00780) 19.70 9.00 20.05
ホテル 華住集団(01179) 38.15 17.43 39.65
免税店 中国旅遊集団(01880) 254.00 120.00 270.60
カジノ サンズチャイナ(01928) 30.00 12.50 31.55
銀河娯楽(00027) 54.90 33.55 56.45
外食 ヤム チャイナ ホールディングス(09987) 468.40 281.00 479.00
海底撈国際(06862) 22.60 9.62 24.70
航空 中国国際航空(00753) 7.61 4.68 7.77
中国東方航空(00670) 3.30 2.50 3.60
中国南方航空(01055) 5.60 3.83 5.76
スクロールできます

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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